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「完熟する野菜の仕組み」
自然栽培では炭素分の多い草木堆肥を使うため、土中の窒素分は常に不足気味です。
草木堆肥施肥(完熟一歩前)した際には、有機物とまだ活性化している微生物・菌類が同時に圃場に入ります。
この時、有機物に含まれる窒素分は微生物等が増殖するためその多くは彼らによって費消されます。
これを窒素飢餓と言います。
 
※窒素飢餓
 生の有機肥料は畑に投下してはいけないと言われております。
そこに棲む微生物等が有機物に含まれる窒素分を吸収して増殖します。
このため、土中は窒素が極端に不足し、野菜は成長できません。
 
草木堆肥施肥後、その圃場に種を蒔いても窒素分は得られませんので、発芽した野菜は土中の窒素分を懸命に探し、髭根を広く深く張ろうとします。
種を蒔いてから1カ月程度は目に見えて野菜は成長していないように見えます。
実は野菜が成長するための土台作りをしている期間であり、根と基部がしっかりと土を掴みつつあるのです。
一か月を経過した頃から基部作りを終えた野菜は、急速に上に伸び始めます。
それは今まで活発に増殖し続けていた微生物等がその活動を鎮静化し始め、一部は死に、逆に窒素分を土中に放出し始めます。
加えて有機物残渣からも窒素分の供給が続き、野菜の成長に必要な窒素分が土中に放出されるため、野菜が目に見えて大きく育つのです。
(土中に窒素分が増えると野菜の体内に成長酵素=ミトコンドリアが増加する)
野菜が生長した頃(約二か月経過)、土中への窒素分の供給が次第に止まり、成長酵素であるミトコンドリアの増殖も止まります。
野菜は成長を終えて完熟期を迎えます。
これを窒素を切ると言います。
 
野菜の体内に蓄積されてきたでんぷん質や炭水化物は、野菜が生き残るために分解され糖質とビタミンに変換され、生きるためのエネルギーに変えて行きます。
これが自然栽培における完熟のメカニズムです。
完熟した野菜は味香りも高く、筋が無く、葉肉は厚く、甘味や旨味が備わっており、栄養価に富んだ野菜となります。
ちょっと難しいですが、お分かり頂けたでしょうか。
つまり、完熟一歩前の草木堆肥は、すぐには土中に窒素分を供給せず、ほぼ一ヶ月後に窒素分を放出し始め、野菜が成長を終える2~3ヶ月後には窒素分の供給が少なくなり、野菜の完熟を促します。不思議ですね。
私は草木堆肥の実践を重ねる中で、この完熟一歩前の草木堆肥の特性を見いだした時には昔の先人達の叡智に驚きました。
栄養価に富んだ完熟野菜とは低窒素土壌の自然栽培でしか生まれないのです。