■■ 様々な農法比較とその特性 ■■
農産物の生産方法やそれら農産物の特徴などについて、以下に簡略に説明します。


@近代農業

化学肥料を施肥し、短期間に収量を上げる農法です。
化学肥料を多投すると、土中には窒素分が多くなり、野菜は成長が早く、味や匂いが薄く害虫が最も好む食料になります。
病害虫を殺すために、大量の農薬をやりつづけなければならなくなります。

自然状態の土中には、元来、何万種類という虫や微生物・放線菌が食物連鎖を形成し、結果としてバランスを保ち、特定の微生物に偏らない自己再生機能(自然状態を再生し続ける)が常に働いていると言えます。
化学肥料・農薬は、土中の食物連鎖を断ち切り、土の自己再生能力・自然循環機能を破壊してしまうという大きな問題点を抱えているわけです。

尚、農産物が出荷できるまでの農薬の投下は通常20回程度、低農薬でも10回程度使用しているのが一般的です。

●化学肥料で育った野菜の特徴●

窒素分の多い土で育った野菜は生長肥大し、デンプン(苦味の要素)・炭水化物が多く、ビタミンや糖分が少なく野菜本来の香りや味がなくなり、 (香り・味は害虫への野菜の防衛本能です)葉厚は薄く柔らかく、色はきれいな黄緑色や薄緑色になります。
逆に、葉物・根菜類を問わず繊維質が多くなり筋張っています。これは虫達の大好物となり、農薬が不可欠となります。

植物は、生育するにつれ、虫や病原菌を寄せ付けないように独自の香りや味を持つようになります。
にんじん・春菊などはその代表的な例です。
化学肥料で急成長した野菜は香りや味が少なく、害虫に狙われやすく農薬が不可欠となります。

A牛糞・鶏糞・豚糞等、畜糞発酵堆肥(バーク堆肥)中心の有機農業

この農法は近代農業に近いと思われます。
蓄糞を主体にした発酵堆肥を多投すると、窒素・リン酸過多の土になり安く、化学肥料を施肥した土に近く、そのため、動物性堆肥は病原菌や害虫が好んで寄ってきます。
この農法も農薬を多投しなければなりません。
化学肥料と比べれば、おが屑・わらやもみ殻などの植物性有機物も入っており、土の中に微生物も繁殖しやすいが、ミネラル分の量も少なくかつバランスが悪く多種類の微生物層が棲みにくく、ほかほかした土になりにくい。
但、農薬投下は化学肥料の野菜と比べてやや少なくなりますが、10回程度は必要となります。
虫に食われていない野菜はそれ以上の農薬を施していると考えて良いでしょう。

●畜糞中心の堆肥で育った野菜の特徴●

窒素分の多い土で育つため、デンプンが分解してできるビタミンや糖分が少なくミネラル分の不足から野菜本来の香りや味が薄くなり、やや筋張っています。
野菜の色はきれいな薄緑色や緑色になります。

Bぼかし堆肥中心の有機農業

米ぬか・もみ殻・菜種粕・おが屑・おから・食品残渣などを混ぜ、微生物発酵させた堆肥等を「ぼかし肥料」と呼んでいますが、これらは窒素分が多く、ミネラルもある程度含まれており、即効性堆肥です。土中には微生物が繁殖し易くなり土は自己再生能力を持ちます。但し、植物性有機物と言っても、窒素分が豊富なために、使い過ぎた場合は畜糞中心の堆肥と同じことになり、逆に使用が少ないと土中の植物性有機物は少なく、それらを食べる微生物の繁殖は抑制されます。 
いずれにしても、糖分・ビタミン・ミネラルが含まれた美味しい農産物に育てるにはそのバランスと施肥管理が難しく土中は窒素過多になりやすく、病原菌発生の恐れも強い。
農薬は化学肥料の野菜と比べてやや少なくなりますが、5〜10回は必要となります。
虫に食われていない野菜はそれ以上の農薬を施していると考えて良いでしょう。

●ぼかし堆肥中心で育った野菜の特徴●

ビタミンや糖分も多くなり、筋張った食感はなく、野菜本来の香りや味がしてきます。
米ぬかや油粕などの植物性有機物も入っており、土の中に多種類の微生物も繁殖しています。
この農法のほとんどがハウス栽培であり、病害虫の発生で全滅しないために農薬は必要となります。
野菜の色は濃い緑色になります。

C植物性堆肥中心の有機農業

植物性有機物(わら・もみ・茅・葉っぱ・雑草・おが屑)と窒素分の多い発酵媒体(畜糞・米ぬか・菜種粕・おからなど)を少量混ぜ、それに土着菌の多く含まれた山林・竹林・畑などの腐葉土を加え、微生物発酵させた堆肥等を植物性堆肥と呼びます。
「ぼかし肥料」と比べて堆肥に窒素分が少なく植物性有機物の残渣が多いのが特徴です。
それは土中の微生物のえさになり、土の中で微生物が増殖(発酵)し、土を掘り起こしていきます。つまり、土の自己再生能力を上げていく役割を果たします。
その微生物発酵の過程で窒素分がゆるやかに土中に補充され続けます。(植物性堆肥は緩効性肥料)
植物性堆肥は、窒素分が少なく、ミネラルや炭素分が多く含まれ、微生物の宝庫です。

●植物性堆肥中心で育った野菜の特徴●

野菜には本来(自然農法で育った野菜達)香り・酸味・苦味・辛味・そして甘味があるものです。
そして、露地栽培で育った野菜は太陽を浴び、暑さ・寒さ・雨風や害虫に耐え、ゆっくり生長し、それぞれの野菜の味を持つものです。
有機農業とは、それを手伝う農法です。 
ビタミンや糖分も多くなり野菜本来の香り・味・甘みが強くなります。筋張った食感はなくなり、生食ではシャキシャキし、熱調理をすると柔らかくなるのが特徴です。野菜の色は濃い深緑色になります。 土中に多くの虫や微生物が食物連鎖によりバランス良く繁殖しており、特定の病原菌は異常に繁殖することはなくなり、育苗期には木酢・にんにく・とうがらし液などにより虫の防除を行います。
この農法では葉が虫に食われているのが普通です。

一言メモ@ 微生物と野菜の関係

野菜の根の周りには、無数の微生物が集合しております。
野菜毎にその微生物の種類は異なり、野菜と微生物は共生関係にあるようです。
従って、どの微生物がどの野菜に相性が良いかわからず、数万種類の微生物や放線菌が棲む山林の中の腐葉土・葉・草を集めて作った植物性堆肥が野菜作りには最適です。
有機農業はある意味では自然農法であり、生きている土は、膨大な微生物や昆虫の棲家になり、畑の土をいかに微生物一杯の生きている土に変えていくかが有機農法です。
そこには、有用な微生物だけでなく有害の病原菌もおり、植物連鎖の生態系があるため、特定の有害の病原菌だけがはびこりません。
この土に農薬を使うと、折角の微生物達は生きられません。

一言メモA ミネラルの話(鉄・カルシュウム・マグネシューム・マンガン等)

ミネラルが豊富に存在する海水が蒸発し雨がふる。雨に含まれたミネラル分は地表に微量に蓄積され続けており、植物がそれらをその植物の個性に応じて吸収しております。 (従って、堆肥にはできるだけ多くの種類の植物性有機物を混ぜ合わせることが望ましい)
これらのミネラル分(バランスも大切)は微生物や植物の健全な成長にはかかせません。
それは同時に人間を含めた生命体の細胞再生機能に不可欠な元素でもあります。

この農法は糖分・ビタミン・ミネラルが豊富に含まれた美味しく栄養価の高い農産物が育ちますが、土作りに最低3〜5年の年月が必要となり、野菜の成長スピードが他の農法と比較して遅く不揃いで商品にはなりにくいため、市場にはほとんど出回っておりません。
長い説明になりましたが、実際に農業の現場で行われている農法は様々です。
実際には今まで説明しました農法の組み合わせで行われております。
最も多く市場に出回っている有機野菜(厳密には有機野菜とは呼べないのかもしれませんが)は、バーク堆肥(畜糞堆肥も含む)と化学肥料の併用型です。→減農薬栽培
ごく一部にはぼかし堆肥(ハウス栽培が中心)のみの有機野菜もあります。→減農薬栽培
誤解しないでいただきたいことは、各専業農家はみなさん一生懸命野菜を育てております。
但、消費者が真に求めている安全で美味しい野菜作りは消費者の理解と協力がなければ作ることはできず、みてくれのきれいな野菜や価格の安い野菜だけを求める今の消費傾向や流通構造が続くかぎりは、真の有機野菜を生産し続けることは極めて難しいと考えます。
私は思考錯誤の末、この植物性堆肥を使った農法に行きつきましたが、この農法は実はむかしの農法であり現状同じ農法を見かけません。
その意味では特殊な農法かもしれません。

当農園の野菜たちは私が作ったというより、バランスの良いミネラルを含み豊富な微生物が作り上げた土が育てた野菜であり、体が美味しいと感じていただければ幸いと思います。

【それぞれの農法比較】
以下は、それぞれの農法による農産物の特徴を一覧表にしたものです。
生産方法 成長度 味・香り 食感 色合い 硬軟度 糖度 ビタミン ミネラル 労力 農薬頻度 微生物 通気性
化学肥料のみ早い 薄い × 黄緑 硬い × × × 少ない 多い × ×
蓄糞堆肥のみ やや早いやや薄い うす緑 やや硬い 少ない やや多め
ぼかし堆肥のみ やや早いやや濃い やや軟い やや多い やや少ない
植物性堆肥のみ 遅い濃い 深緑 軟い 多い なし


纏めの一言メモ 野菜の栄養価について

野菜は光合成等によりミトコンドリアという成長酵素の働きで大きくなり、その体内に先ずデンプン・炭水化物を蓄えます。
地中の窒素分が少なくなると成長が止まり、完熟期を迎え、体内のデンプン等は分解され、ビタミンや糖質に変化します。
これが完熟野菜です。(但、美味しいが出荷適期は短かい)
人はデンプン質を体内に吸収できず、糖質やビタミンは吸収できます。従いまして栄養価のある野菜とは、この完熟野菜と言えます。
逆に、地中に窒素分が多いと、ミトコンドリアなどの成長酵素は活発に働き続け、野菜の体内に蓄積したデンプン等は糖質に変化しないまま、やがて、その野菜は出荷されてしまいます。
このような理由から化学肥料・畜糞等で急成長した野菜は栄養価の点では、乏しいと言えます。